国産畳イグサ(藺草)の生産地についての話をしたいと思います。
いぐさの国内生産について
畳の素材・材料は主に畳の芯材にあたる畳床(たたみとこ)、畳の表面に張ってある畳表(たたみおもて)、そしてフチに逢着してある無地や柄のある生地の畳縁(たたみべり)で構成されています。この中で畳の顔である畳表は、一般的にイグサ(藺草)の織物で、このイグサはお米と同じように春「田んぼ」に苗を植えつけ栽培され、初夏に刈入れされる農産物です。この他に現代の畳表は農産物のイグサ意外に、和紙や樹脂などの原料で織り込まれている物もありますが、日本国内で一般流通されている物はイグサ畳表が主流です。
国内の生産高は年々減少
現在いぐさ畳表の流通量は価格が安い中国産が半分以上と言われています。ここ1,2年の統計情報を調べてませんので数字的な物は把握していませんが、6,7割だと思います。主に中国産はコスト面からマンションや個建ての新築物件やアパート・団地などの賃貸物件に流通しています。ですが、一般的な畳店を介した畳替え工事でのニーズは国産いぐさ畳が主であると言われています。これは当店も含めて多くの畳店が国産品をオススメしているのと、一般のお客様自身が国産品の畳替え表替えを望まれているからだと思います。
年々国産いぐさを栽培する農家が減少しているもの確かで、20年くらい前の平成年はじめと比べていぐさ生産農家はは半分以下で、作付け面積も半分に減少しているとのこです。
国内において熊本県が生産のほとんどを占めている
30年くらい前は広島の備後地方がイグサの生産地として有名でしたが、備後畳表は年々減少してきて今ではわずかな流通量となってしまいました。
今でも備後地方で栽培された畳表のことを畳業界では「地草(じぐさ)」と呼ばれていますが、大変希少で高価な物となっています。地草はとても丈夫なイグサで、しかも日焼けした表面が綺麗な飴色に色づきとても優雅な品物です。当店でも年に数回ほどこの地草を施工しますが、入荷の予定が難しく数ヶ月先の入荷というケースもあります。
また岡山県(福山地域)もイグサ生産地では有名どころでしたが、こちらも備後同様に生産は減少し、現代は生産されていないと聞いています。
さて、この備後や岡山のイグサ生産に変わって台頭してきたのが熊本県八代でした。もともと八代の土壌は畳イグサにとても適したもので、気候風土もイグサ栽培に適した土地柄が影響していると言われています。
またここ20年では、熊本県や熊本県イグサ農業組合等が主体となり「イグサの品種改良」の研究とともに「田んぼの土壌」をいぐさ栽培用に改善努力してきた功績が大きいと言われています。後で個別に説明しますが、熊本県特有のイグサ品種「ひのみどり」が市場的に大変人気となっています。
このほかイグサの生産地として九州福岡地方や四国地方など若干生産されているようですが、今では東京の畳店ではほとんど見かけないと思いますし、当店でも取扱いした記憶が遠い昔のような気がします。
熊本県八代地方におけるイグサ栽培の歴史
熊本県八代地方は江戸時代に肥後と呼ばれる地域で、肥後のイグサ栽培歴史は古く1505年ほど、今の八代市千丁町太牟田にあった上土城主の岩崎主馬守忠久公(いわさきしゅめのかみただひさこう)が領内の古閑渕前にイグサ栽培させて、特別保護のもとに奨励したのが始まりといわれています。太牟田表・八代表・肥後表と名前は変わり、幾多の困難をのりこえ地場産業として定着した昨今、八代地方を中心めざましい発展をとげ、現在では日本一の生産高を誇る「くまもと畳表」の生産地に成長してきた経緯があります。